災害に強い海岸林の造成・維持管理手法を開発し、さらに、「砂浜〜海岸林」を一体として捉えた沿岸域の保全・管理手法を提案する。それが海岸林・沿岸域緑化研究部会の役割です。
連絡先: 岡 浩平 k.oka.gw(あっと)cc.it-hiroshima.ac.jp ※(あっと)は@に直して下さい
東日本大震災の津波被害を契機に、海岸林の再生や防災・減災の効果に大きな注目が集まりました。
日本緑化工学会としても、2014年に立ち上げた防災緑化研究部会のもとに「沿岸地・海岸林WG」が作られましたが、沿岸地・海岸林の調査研究をさらに発展させ、災害に強い海岸林の造成・維持管理手法を開発し、さらに、「砂浜〜海岸林」を一体として捉えた沿岸域の保全・管理手法を提案するために、2018年からあらたに、研究部会として立ち上げ、活動を開始しました。主な研究内容としては、下記のような内容を検討しています。
最新情報
シリーズ「海岸の連続性を考える」では、海浜植物や海岸林、防災施設などのあり方について、連続 性の視点から議論してきました。今回(V)は、クロマツ林の管理と配置に焦点を当てて議論します。 クロマツ林は、潮風や飛砂などから私たちの暮らしを守ってきましたが、マツ材線虫の蔓延、抵抗性マ ツの苗木不足や密度管理に大きな課題を抱えています。これらの課題について、長年取り組まれてこら れたお二人の講師をお招きして、最新の事例をご紹介いただきます。
講演1. 海岸林管理の必須項目としてのマツ材線虫病対策:中村克典(森林総合研究所東北支所)
クロマツは日本の海岸林において欠かせない構成要素である一方、マツ材線虫病(いわゆる松くい虫
被害)に対し極めて弱いという弱点がある。従って、海岸林の維持管理を考える上で、マツ材線虫病対
策は必須の項目となる。マツ材線虫病の被害は適切な防除により抑え込むことができるが、多大な労力・
コストを要する。樹種転換を推進することにより防除対象域を限定し、かつ対象域マツ林を感染源から
隔離して防除努力を集中することは、持続可能な海岸林管理に向けた指針となりうる。
講演2. クロマツ海岸林における適正な植栽密度と今後の維持管理:小倉晃(石川県農林総合研究センター)
クロマツ海岸林造成では10,000 本/ha植栽という密な植栽密度を基準とし、高温乾燥の砂地、潮害、
飛砂という過酷な条件から、早期にうっ閉させる方法がとられてきた。しかし、近年は砂浜の侵食、飛
砂量の減少、人工的な防風対策の充実により、早期うっ閉の重要性は低くなった。また、基準ができた
当初は生育環境の悪さによる枯損が多く見られ、補植も行われてきたが、近年は環境の悪さによる初期
の枯損はほとんど見られなくなった。そこで、環境条件から適正な植栽密度について考え、今後の維持
管理につなげたい。
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海岸の防災・減災や生物多様性保全の問題は、海側から陸側に向かって、海浜植物や海岸林、各種防災施設などをどのように配置していくのか、つまり、『海岸の連続性』の問題とも言い換えることができます。
「海岸の連続性を考えるT」では、広い視点から海岸の連続性を議論しましたが、今回(U)は砂浜・砂丘の領域に焦点を当てて議論します。海岸の連続性を考えるうえで、そもそも海岸が侵食傾向なのか、堆積傾向なのか、さらには『飛砂』がどれほど発生しうるのかを理解することは、非常に重要になります。各地域の飛砂量の推定ができれば、海岸林の林帯幅や構造を決定する情報の1つになります。
また、砂浜・砂丘は、飛砂などによって地形の変化が生じやすく、海浜植物などの限られた植物が生育する場所になっています。日本海沿岸などの飛砂害の激しい地域では、海浜植物などを利用した砂地の被覆も求められており、地形の変化を捉えることは必要不可欠と言えます。従来は、杭の設置などで、点や線的な地形変化を捉えることが主流でしたが、ドローンの技術の発達により、面的な地形変化を捉えることも可能になってきました。そこで、今回の勉強会では、お二人の講演者をお招きして、海岸の飛砂と地形変化に関する話題を提供して頂く予定です。
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日本の海岸林は,マツ枯れや津波による甚大な被害を受け,今まさに各地で再整備が進められています。海岸林の再整備は,クロマツの植栽を主体とした従来型のものに加えて,地域の状況に応じた多様な取り組みが進められています。例えば、天然更新したクロマツや自然侵入した広葉樹を活かした事例もあり,これらは生物多様性保全やコストを抑えた手法になることが期待されます。また,海岸林の再整備にあたっては,土壌や微地形の改善が必要な地域もあり,東北沿岸では塩害や過湿の対策、日本海沿岸では前砂丘の修復が進められています。マツ枯れや管理放棄など海岸林が抱える苦難を乗り越えるためには,このような各地の事例を持ち寄り,多様な海岸林のあり方を模索することが大切と考えました。そこで,今回の研究集会では,マツ枯れや津波,飛砂による被害を受けたクロマツ林のその後の動態や植生管理の事例を共有し,今後の海岸林についてみなさんと議論したいと思います。
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東日本大震災の津波被害を契機に、海岸林をはじめとする海岸の防災と環境保全に大きな注目が集まっている。新潟県の海岸では、飛砂害の抑制のために海浜植物を活用した砂丘の緑化や、クロマツ海岸林に侵入した広葉樹の活用に向けた研究が早くから進められてきた。今回の公開勉強会では、このような先進的な新潟県の事例を学び、日本の海岸の防災と環境保全の将来を考えることを目的とする。
申し込み: 広島工業大学 岡 浩平 宛
以下のメールアドレスに、所属・名前を記載して、申し込みください。
e-mail:k.oka.gw(あっと)cc.it-hiroshima.ac.jp ※(あっと)は@におきかえて下さい
※申し込みの方に別途、懇親会やお弁当の案内をいたします。
※定員:20名(先着順) 参加費:3000円(当日徴収します)
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2018年2月24日(土)に東北学院大学土樋キャンパスにて開催された標記フォーラムを後援しました。フォーラムでは吉崎真司幹事が基調講演を、岡浩平部会長がプロジェクト成果報告の講演をしました。
(主催:「生態系サービスの享受を最大化する 里浜復興シナリオ創出」プロジェクトチーム)
【後援行事】海岸林から考える ふるさと・里浜の復興デザイン ブログ(行事紹介)へ
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